コーティングの効果をより最大限発揮させるためには、「下地処理」の作業は欠かせません。専門店で施工してもらうときはもちろん、DIYでコーティングを施工するときも下地処理を行うかどうかで、コーティングの仕上がりは全く異なります。
しかし、下地処理方法についてはネットを調べれば、手順や方法などを紹介しているサイトは数多くありますが、どのような下地処理剤を使って作業をすれば良いか、必要な道具は何か、についての情報は少ないのが現状です。
そこで今回は、下地処理を行うために必要な5つの下地処理剤と、それに伴い準備するべき道具について詳しくお伝えしていきます。
この記事を読んでいただければ、下地処理を行う手順と必要な道具がわかるので、DIYの参考になるのはもちろん、下地処理の最低限の知識がつくので、業者に依頼する際も作業内容を把握することもできるので、質の悪い業者に騙されなくて済みます。
満足なコーティング効果を得るためにも、下地処理について覚えていただければと思います。記事の最後には「下地処理剤チェックシート」も用意しましたので、買い物時にぜひ活用してください。
1. コーティング前に知りたい下地処理の基礎知識を解説
一言で下地処理剤と言っても、様々なタイプがあります。下地処理の作業工程に合わせて数種類の下地処理剤を使い分けることで、より効果的な下地処理が行えます。
その反面、正しいタイミングで正しい液剤を使い分けないといけないので、しっかりと手順と液剤の内容を把握する必要があります。
まずは、下地処理についての基本を確認していきましょう。
1-1. 下地処理の目的と効果
下地処理の目的は、コーティングを行う前にボディーの塗装面を綺麗にすることです。例えば、汚れや洗車傷を取り除きます。初めてコーティングする場合だけではなく、再施工や塗り直し、部分的な補修の前にも下地処理は必要です。
質の高いコーティング業者は、下地処理を丁寧に行なっていますし、コーティングにおいて素人とプロで一番違いが出るのは下地処理の技術の差です。いくら最高品質のコーティング剤を使っていても、下地処理が不十分ではコーティングの効果を最大限に引き出すことができません。
ただ、DIYでコーティングを施工する前も、下地処理をするかしないかでは、仕上がりの質が全く異なります。なので、自分でコーティングを施工する際にも、下地処理は欠かすことができない作業です。
下地処理により得られる効果は主に、
- コーティング効果が最大限に発揮できる
- コーティング効果の持続期間が長くなる
- コーティング剤の密着力が高まる
- コーティングのムラを防ぐ
- コーティング後にツヤが出る
- コーティング後のツヤ・輝きを最大限にする
これを見ても、コーティング効果を発揮するために下地処理が必要ということはお分かりいただけるのではないでyそうか。
もし、過去に施工したコーティングで満足な効果が得られなかった場合、下地処理が不十分だったことが原因である可能性があります。
1-2. 下地処理の作業工程
一言で下地処理と言っても、やるべき作業は主に次の6つの工程があります。
- 汚れ落とし(雨汚れ、泥汚れ落とし)
- 水垢、鉄粉除去
- キズ消し(磨き①)
- 古いコーティング剤落とし(磨き②)
- 光沢、ツヤ出し(磨き③)
- 脱脂
それぞれの工程に合わせて、必要となる下地処理剤が異なるため、施工前には道具の準備を忘れずに行うようにしましょう。
2. 下地処理剤の種類と作業手順
自分で下地処理を行う場合には、次の5つの下地処理剤を用意しましょう。
- カーシャンプー(脱脂シャンプー)
- 水垢落とし剤
- 鉄粉除去剤
- コンパウンド(細目→極細→超極細→鏡面仕上げ)
- 脱脂剤
作業手順もこの①から⑤の順番に行なっていきます。それぞれの目的や使い方について詳しく確認していきましょう。
①カーシャンプー
下地処理作業は、洗車から始めなくてはなりません。なぜなら、砂やホコリなどの汚れがついたまま作業を進めると、ボディーを傷つけてしまうからです。
普段は水洗いのみという方でも、下地処理の際にはカーシャンプーを用意しましょう。
カーシャンプーは、ボディーの色によって種類が分けられていますので注意して下さい。黒や紺などの濃い色に対応したタイプや、白、パール色に対応したものなど、あなたの愛車のボディーカラーに応じて選ぶようにしましょう。
商品によっては水垢落とし効果を含むカーシャンプーもありますので、こちらを利用すると便利です。
また、カーシャンプーでは古くなったポリマーコーティングも洗い流すこともできます。
②水垢落とし剤
カーシャンプーで洗車をしても洗い落とすことができないような「水垢」があります。水垢には専用の水垢落としを利用しましょう。
水垢落とし剤には2つのタイプがありますので、よく確認してから購入して下さい。
- コンパウンドを含むタイプ
- コンパウンドを含まないタイプ
コンパウンドとは「研磨剤」のことです。研磨剤を含んでいる場合には、しつこい水垢汚れを削り落とす効果があるため、洗浄効果が強くなります。ただし、研磨剤の粒子の大きさによっては強くこすりすぎるとボディに細かな傷ができてしまう可能性があります。
一方で、コンパウンドを含まないタイプのものは、洗浄液の化学成分によって、汚れ(水垢)を溶かして落とすものです。ボディーに傷ができないという特徴がありますが、洗浄力が弱くなります。
こちらも、車のボディーカラーに応じて選ぶと良いでしょう。黒や紺などの濃い車の場合には傷が目立ちやすいため、コンパウンドを含まないタイプを選びましょう。また、下地処理初心者の方や傷を付けるのが怖いという方はコンパウンドを含まないタイプをお勧めします。
白やシルバーなどの淡色のボディーカラーの場合には、丁寧に扱えばコンパウンドを含むタイプでもいいでしょう。
コンパウンド配合の有無は、商品説明をよく見るとわかります。対応色が明記されているものもありますので、よく確認してから選ぶようにしましょう。
水垢落としに「激落ちくん」を使うのはNG
一部では「激落ちくんを使って水垢が落ちた」という情報が出回っているようですが、ボディに使うのは絶対に避けてください。激落ちくんの注意点や正しい使い方は「車の水垢に「激落ちくん」は危険?!確認すべき5つのこと&使い方」こちらの記事で詳しく解説しています。
③鉄粉除去剤
鉄粉(てっぷん)とは、空気中に漂っている鉄の粉のことです。例えば、工場や線路、車のブレーキから発生します。
ボディーの表面がザラザラしてしまう原因は、鉄粉が刺さり酸化によって鉄粉がこびりついてしまうことです。鉄粉もカーシャンプーだけでは洗い落とすことができないため、鉄粉除去剤を利用する必要があります。
この鉄粉除去剤には、次の2つのタイプがあります。
- スプレータイプ
- 粘土タイプ
スプレータイプのものは、化学変化によって鉄粉を浮き上がらせて落としやすくする効果があるものです。簡単な鉄粉汚れの場合には、これだけでも綺麗になります。
しかし、しつこい汚れの場合には、鉄粉除去粘土も併用する必要があります。この粘土を使えば、スプレーだけでは取れない鉄粉も除去することができます。(ただ、時間はかかってしまいます)
④コンパウンド(磨き)
コンパウンドとは「研磨剤」のことです。歯磨き粉に含まれるザラザラしたものと同じです。コンパウンドは、キズ消しや古くなったコーティング落としや、傷んだ塗装磨きのために使用します。
細かくて浅い傷の場合には、コンパウンドを使って磨けば消すことができます。「キズ消し」として販売されている液剤は、コンパウンドの部類に入ります。
また、コーティングを塗り直したり、再施工する場合には、古くなったコーティング剤を取り除く作業が必要です。特に、ガラス系コーティングをされていた場合には必須です。
ポリマーコーティングの場合には、強力なカーシャンプーを利用することで洗い流せますが、ガラス系コーティングの場合には、ガラス被膜がボディに付いているのでコンパウンドで削り落とす必要があります。
磨きでボディのツヤを蘇らせる
さらに、塗装自体がダメージを受けて、輝きを失いくすんでいる場合には、塗装面を磨き上げることで、光沢やツヤが綺麗に蘇ります。その際にもコンパウンドを使います。
ただし、古いコーティング落としや塗装を磨く作業は、ボディー全体に行う必要があるため、手作業では満足に施工することができません。部分的なコーティングの補修なら自分でも施工できますが、ボディー全体の場合、または、新車のようにキレイに仕上げたい場合には業者に依頼した方がいいでしょう。
もしくは、ポリッシャーなどを使う技術をお持ちでしたら、広範囲の施工も可能です。ただし、高度な技術が必要であるため、失敗するリスクがあることも忘れないようにしましょう。
⑤脱脂剤
脱脂(だっし)とは、油汚れを取り除く作業のことです。脱脂によりコーティング剤の密着力が高まるため、コーティング効果を高めて、持続期間も長くなります。
脱脂剤には、次の3つのタイプがあります。
- カーシャンプーに混合されたタイプ
- シリコンオフ
- エタノール
①から④の作業を行なった後には、再び水洗い洗車をしてから脱脂作業をして下地処理を仕上げていきます。
カーシャンプーに脱脂剤が含まれたタイプを使用すれば、この作業工程を同時に行うことができますので便利です。
シリコンオフやエタノールを使用する場合には、洗車後にこれらを含ませたクロスで拭きあげていきます。
自分で下地処理を行う場合には、作業工程や必要な道具も多くなるため、カーシャンプーに混合されたものを用意するといいでしょう。
3. 下地処理剤の他に必要な道具
下地処理を行うためには、ここまでお伝えしてきた下地処理剤の他にも、必要となる道具がいくつかありますのでご紹介します。
必ず用意した方がいいものは、次の3つです。
①洗車道具
②マイクロファイバークロス(洗車用と普通タイプ)
③コンパウンド用のスポンジ
また、用意すると便利な道具もあります。
④マスキングテープ
⑤ポリッシャー
①洗車道具(2セット)
ご自分で下地処理も行おうとされている方は、普段から手洗い洗車を行なっている方が多いと思いますので、普段使用している道具を使っていただければ構いません。(カーシャンプーについては、ここまでお伝えしてきたものを別に用意しましょう。)
ただし、下地処理の最初に行う洗車と、脱脂作業前に行う洗車で使う道具は、別に用意するのがおすすめです。
つまり、バケツやマイクロファイバークロス、洗車に使うスポンジを2セット用意することになります。併用してしまうと、初めに洗車した時の汚れや油が付着しているため、せっかくの下地処理効果も台無しになるからです。
細かく作業するならば、洗車用のマイクロファイバークロスと拭き取り用のマイクロファイバークロスを用意すると良いでしょう。
②マイクロファイバークロス(10枚前後)
マイクロファイバークロスは、すべての作業工程で使い分けるようにしましょう。そのため、10枚前後用意することをおすすめします。
下地処理作業を行う前に、「水垢落とし用」「脱脂用」とわかるようにマジックで記入したり、色分けしておくと間違えることがないでしょう。
③コンパウンド用のスポンジ
コンパウンドを使用して磨く際には、専用のスポンジを用意しましょう。もちろん、洗車用のスポンジと併用して使うことは厳禁です。スポンジに残ったコンパウンドがボディーを傷つけてしまうからです。
コンパウンド専用のスポンジがカー用品店でも販売されていますので、準備の際には忘れずにチェックしてください。
また、コンパウンドはスポンジを使わなくてもマイクロファイバークロスでも対応できます。マイクロファイバークロスの方が傷を付ける心配がないので、安心して使えるかもしれません。
④マスキングテープ
下地処理は、基本的にはボディー本体の塗装面に行うものです。そのため、ウインドウ周りのゴムやヘッドランプ、ストップランプなどの樹脂パーツについてしまうと、傷をつけてダメージを与えてしまいます。
下地処理の不要な部分にマスキングテープを貼っておくと、こうしたことを予防することができるので安心です。必ず必要な道具ではありませんが、慎重に作業を進めたい方は用意することをおすすめします。
⑤ポリッシャー
ポリッシャーとは、電動の研磨道具のことです。コンパウンドと併用して、キズ消し、古くなったコーティング落とし、塗装の磨き上げに使用します。装着したブラシやパッドが電動で回転するため、作業効率が向上し、ボディー全体への作業も行うことができます。
ただし、ポリッシャーを使うには、熟練した技術が必要になります。素人が安易に手を出してしまうと、ボディーを傷つけてしまい、取り返しのつかないことになってしまうかもしれませんので注意してください。
どうしても使いたい場合には、研磨力の弱いダブルアクションポリッシャーを慎重に使ってください。ダブルアクションポリッシャーでも取れないキズやウォータースポットは、専門業者に頼んでください。
4. 下地処理作業のチェックシート
下地処理を行うためには、何種類もの下地処理剤と道具が必要になります。作業を始めてから足りないものに気づくことがないように、次の下地処理チェックシートを活用してください。
5. 下地処理剤の注意点
ここまでお伝えしてきたように、下地処理のために必要な下地処理剤は何種類もあります。そして、そのほとんどが、汚れや傷を溶かしたり、削り取るようなものです。そのため、使い方を間違えると、ボディーの塗装自体にダメージを与えてしまう危険があります。つまり、下地処理には技術力が必要になるということです。
下地処理を自分で行う場合には、こうしたリスクもあることを忘れてはいけません。
下地処理の技術がない方や不安がある方は業者へ相談してもいいでしょう。車の状態を判断して、自分で作業できる範囲なのか、それとも業者へ依頼した方がいいのかも見分けてもらえるでしょう。また、万が一自分で施工して失敗した時にも、相談できる業者がいれば安心です。
6. 下地処理はコーティングに欠かせない作業
下地処理剤は、その作業工程に合わせて、次の5つのものを用意する必要があります。
- カーシャンプー
- 水垢落とし剤
- 鉄粉除去剤
- コンパウンド
- 脱脂剤
正しく下地処理を行なって、満足なコーティング効果を発揮させるためには、これらの下地処理剤を使い分ける必要があります。
また、その際に必要となる道具もそれぞれに用意する必要があります。ご自分で施工される場合には、道具の準備を忘れずに行いましょう。
今回の記事を参考にしていただければ必要な道具は網羅できるでしょう。下地処理剤チェックシートも用意しましたので、ぜひ活用してください。
最後に、車の下地処理には道具の準備だけではなく、施工方法の確認も重要です。施工方法を誤ると、ボディーの塗装本体にダメージを与えてしまうので十分に注意してください。