自動車ボディの保護コーティングはその技術向上とともにどんどん進化を続けています。今日、車の保護を目的としたオイルワックス、ポリマーコーティングなどが存在しますが、最高の保護性能をほこるのが「ガラスコーティング」です。

強固なガラス皮膜と光沢を長期間(あるいは半永久的)維持できる抜群の耐候性を誇るガラスコーティングですが、その特性によりさらに2種類に分けられ、それが「親水コーティング」と「撥水コーティング」と呼ばれる特性ですが、それらは一体なにが違うのでしょうか。

2019年3月現在では、一般的には撥水性コーティングの方が人気を集めており、専門店もDIY商品も撥水性の液剤が多く取り扱われています。

しかし、2018年下半期頃から親水性コーティングに対しての人気が急上昇しており、親水性コーティングを施工したいという方のお問い合わせが増えております。

親水性をお求めのお客様にお尋ねしたところ、親水性に興味を持つ理由は、

  • 汚れがつきにくく落としやすいので、日頃のメンテナンスが楽になる
  • ギラギラしたツヤ感よりも上質でシャキッとした輝きが良い

という方が非常に多いです。

この記事ではガラスコーティングの特性と種類の違い、そしてそれぞれの効果について解説します。ぜひ、ガラスコーティング選びの参考にしてください。

1. 親水コーティングと撥水コーティングの違い

車のガラスコーティング剤にはさまざまなものがありますが、大きく分けると親水性と撥水性に分けられます。

親水性:水となじみやすいため水滴にならず、サッと水の幕が広がるもの
撥水性:水を弾きコロコロとした水玉がであがるもの

それぞれ使用するコーティング剤の成分によって使い分けられ、親水性コーティングと撥水性コーティングとして明確に分けられます。

それぞれの特性にメリットとデメリットがあるため、それぞれの性質を活かした多くの商品が販売されています。そのため、ガラスコーティングを施工する際には、どちらのコーティング剤を使用するのかを選択しなければいけません。

コーティングの性質の選び方については、それぞれの車の保管状況やカーライフによって異なるので一概に何がベストか判断できませんが、状況によってオススメのコーティングの種類はあります。

2. 親水コーティングの特徴

親水性とは、水と親和しやすい特性

もう少し簡単に表現すれば、『水となじみやすい』性質です。球形になろうとする水の表面張力を、コーティングの表面処理によって分散させ、大きな水玉を作らないようにする性質と言えます。

そのため、水に濡れた自動車のボディには薄い水の幕ができあがります。これが親水性のコーティング剤の効果です。艶の出方は撥水性のコーティング剤には一歩ゆずりますが、より自然な光沢感をもっています。

親水性によって水がまとまり流れ落ちていく

親水性によって水がまとまり流れ落ちていく

2-1. 親水コーティングのメリット

親水性のコーティング剤はウォータースポットに対して非常に有効に働きます。親水性のコーティングを施したボディには、水の表面張力が働かず、付着した水分が水滴になりにくいため、ウォータースポットができにくいのです。そのため、屋外駐車をされる車には親水性コーティングの方がメリットが大きいといえます。

2-2. 親水コーティングのデメリット

撥水性と比較すると艶の出方が劣り、水の弾きが無い分、コー ティングが施工されているかどうか見分けがつきにくいという点がデメリットです。見た目で判断しにくいため、人気も撥水性よりも低くなりがちの傾向にあります。

また、親水性は水滴を作らず水をまとめる性質があるので、走行中に水滴をパパッと飛ばすことはできません。そのため、一般的に親水性は汚れを溜めやすいとも言われています。

デメリットを無くした親水コーティングもある

親水性コーティングの中には上記で紹介したデメリットを改良したコーティング剤もあります。その一つに親水性とともに「滑水性」を兼ね備えた液剤もあります。

滑水性とは、水が表面を滑るように流れ落ちる性質で水が残ら ないのが特徴です。そのため、滑水性を兼ね備えている親水性コーティングは、水滴を作らず水がまとまり、かつ、まとまっ た水がボディを滑るように流れ落ちるので、ボディに付着した汚れを水と一緒に流し落とすことができます。

滑水性兼親水性コーティングは、ウォータースポットの原因となる水滴を作らず、さらに水と一緒に汚れを流し落とすことができるので、現在流通しているコーティング剤の中では、一番車を綺麗に保つことができるコーティングと言えるでしょう。

3. 撥水コーティングの特徴

水をはじく性質のことを撥水(はっすい)性といいます。撥水性コーティングを施されたボディが水に濡れると、コロコロとした水玉になって、ボディ上 を転がっていきます。

撥水性コーティングを施工したボディ表面

撥水性コーティング表面は、一見綺麗な平面に見えますが、目には見えないほど小さな凸凹状になっています。この凸凹により、ボディと水との接触面積が小さくなり、表面張力によって、より真円に近い水滴がつくられます。

そして、撥水コーティングされたボディは、水滴の接触抵抗が非常に少ない状態のため、走行風などで簡単に水を除去することができます。ミクロの凸凹が光を乱反射し、ギラギラとした光沢が出るのが特徴です。

3-1. 撥水コーティングのメリット

水滴になった水は、重力や走行風で、簡単に飛んで行きます。雨の後のボディに残った水滴はコーティングをしたことが視覚的に分かりやすく、満足感が高いのがメリットです。

また、親水性のコーティングに比べ、コーティング幕が厚く感じられ、深みのある光沢が出ます。コーティング表面の硬さも親水性に比べて硬い傾向にあるので、擦り傷に強いのもメリットです。

3-2. 撥水コーティングのデメリット

水滴ができることで、先述したウォータースポットができやすいのが最大のデメリットです。ウォータースポットを作らないようにするためには、

  1. 雨が降ったあと雨汚れの水滴が残っているボディを速やかに洗車して洗い流すこと。
  2. 洗車後の水滴を残さないで完全にふき取ること。

を徹底してください。

4. 親水と撥水はどちらが良いのか?

親水性と撥水性のそれぞれのメリットとデメリットを挙げましたが、結局どちらが自動車のコーティング性質として優れるのでしょうか?

ガラスコーティングの車の塗装を物理的に保護する能力はどちらも同じなので、問題はコーティング表面の処理ということになります。塗装の保護という点から見れば、ウォータースポットのできにくい親水性の方が車にとっては絶対的に有利です。

一方、撥水性は水を弾く性質が、いかにも水を弾いているという満足感を得ることができ魅力的です。また、コーティングを施工したことがわかりやすいので撥水性の方が人気を集めていました。販売されているコーティング剤の親水性と撥水性の割合を見ると、撥水性コーティングの方が多く、親水性コーティングは今はまだ少数派といわざるをえません。

ただし、冒頭でも述べたように親水性コーティングはここ1年あまりで人気が急上昇しており、弊社にも親水性コーティングに興味があるというお問い合わせが増えています。

親水性コーティングに興味がある方は、やはり長く綺麗に乗るためにできるだけ汚れがつきにくく、そして汚れが落としやすいという理由で選ばれていきます。

艶や水の弾きなどの見た目のパフォーマンスは撥水性の方がわかりやすいという旨をお伝えしても親水性を選ばれてくので、カーライフも変わりつつあり大切に長く乗りたいという方が増えてきているのでしょう。

4-1. 洗車の回数が減るのはどちらの性質か?

親水性、撥水性論争で度々議論に上がるのが「どちらが楽にメンテナンスができるか?」という話ですが、結論からいうと、親水性の方がメンテナンスは楽になります。

一般的に、完璧な親水性を維持するためには定期的なメンテナンスが必要と言われていますが、これは撥水性でも同じことで、定期的メンテナンスを怠れば撥水性でもその効果を維持することができません。

ただ、親水性はボディから水が流れ落ちる性質ですので、水の流れと一緒にボディに付着した汚れを流してくれる効果もあります。

一方、撥水性は水が流れ落ちることなくボディに水滴が残るので汚れが流れ落ちることはありません。つまり、撥水性の方がボディに汚れが残りやすいのです。

先述したように、撥水性は雨が降った後や、洗車後はしっかりと水滴を拭きとらなければいけません。洗車の回数は親水性、撥水性ともに同じだとしても、撥水性のほうが一手間作業が多くなります。その手間を加味した上で、水の弾きに期待するのであれば撥水性も魅力的でしょう。

5. コーティングの効果を得るには、液剤の質よりも職人の技が重要!

ガラスコーティングを施工するに当たって、多くの方は液剤の特徴や質について詳しく調べているのですが、コーティングを施工する人は誰なのか、というところまでは見ていないのではないでしょうか。

実は、コーティングは液剤だけでなく、それを塗布する下地を整える、いわゆる磨きの作業がとても重要で、磨きの技術がない施工者がいくら高品質の液剤を塗布したところでコーティングの効果を発揮させることはできません。

どれくらい違うのか、以下の動画をご覧いただければ一目瞭然だと思います。

ボンネットに施工したのは、弊社の「ダイヤモンドラストコーティング」で、ガラス皮膜の特徴は親水性です。ボンネットの右側と左側で同じ液剤を塗布しております。

熟練のディテーラーが施工した右側は、水がサッと引いていくのがわかりますが、見習いレベルの施工者が施工した左側は水の流れが遅く、ボンネットに水も残っていることがわかります。つまり、液剤は同じでも施工の技術によって仕上がりの効果は全く別ものになってしまうということなのです。

液剤は親水性を使ったけど、効果が感じられないという方は、施工者の技術が足りなかったかもしれません。今後、コーティングの施工を検討している方は、液剤の性質で選ぶだけでなく、どんな人が施工するのかも合わせて確認するようにしましょう。

ラストコーティングでは、動画の右側を施工した熟練の職人が、お客様のお車をしっかりと時間をかけて施工するのでご安心ください。

6. 親水と撥水の違いと特徴のまとめ

最後に、親水性コーティングと撥水性コーティングの違いを分かりやすくまとめます。

親水性のコーティングは水滴が残りにくいのでウォータースポットできにくく、水の流れと一緒に汚れが落ちやすい。ただ、水を弾かない分見た目でコーティングの効果を確認することが困難。

撥水性のコーティングは水滴が残りウォータースポットはできやすいが、コーティングのツヤや水の弾きのより、見た目でコーティングが施工されえいるかどうかわかりやすい。

以上の特性から、

  • 車のボディを長期に渡って良いコンディションを維持したいという目的ならば親水性コーティング
  • ツヤ感や水の弾きが好きであれば撥水性コーティング

をおすすめします。ご自身の車と、ライフスタイルに合わせ、どちらが最適なコーティングかを選択するのがベストな判断です。